沖縄を拠点にその技術と感性を国内外へ。

若年層の女性に圧倒的人気を博している「東京ガールズコレクション」においてヘア担当のトップとして活躍する石川正幸さんは北谷町の出身。東京、パリなどで雑誌、ショーなどの世界で活躍後、昨年、故郷北谷町に美容室をオープンしました。
沖縄を拠点に3月には、北京で開催されたコレクションにも参加し、国内外で活躍しています。これまでの経緯、今後の夢などについて伺いました。
美容師になったきっかけは?
高校卒業後、これといった夢が見つからず悶々としていました。かと言って妥協はしたくなかったので、アルバイトをしていたのですが、ある時、たまたま出かけた東京原宿を通りかかったら、ガラスの向こうでカットをしている美容師の姿をみつけたのです。この動きがとてもかっこよくて思わず見とれてしまったんですね。次の日には美容学校を探し始めました。
でも東京の美容学校は学費が高かったので、実家のある沖縄に戻ることにしました。東京でアルバイトをして入学資金をためて帰沖。沖縄の美容学校を卒業後、地元で働き始めました。
その間のこと、当時沖縄ではあまり放送されていなかったパリコレのビデオを友人から借りて見たのですが、これがまたかっこよくて、ショーの仕事がしたいと思うようになったんですね。同時にファッション系の雑誌の仕事にも憧れを抱くようになりました。
僕はモノ作りが大好きで、生地を買って来ては洋服作りもしており、ヘアスタイルだけの仕事に飽き足らず、ファッションをトータルで捉え、ヘアスタイルもその中のひとつとしてのポジションであるという仕事がしたいと考えるようになりました。
そして、東京へ行くことにしたのです。それが今から15年前のことです。当時の僕にとって、東京はすべて最先端の美容の仕事ができる場所だと思っていましたので、最初は街の美容室のようなところに就職し、やりたいこととのギャップに悩むという失敗もありました。でも今思えばすべては経験するべくしてしたことだと考えています。
半年を経て、その美容室を退めて、原宿をぶらぶらしている時、オープンを控えた美容室に、「技術者募集」の張り紙を発見したのです。さっそく応募し、結果採用されたのですが、後々聞いた話によると、社長は二の足を踏んでいたらしいのですが、今でもお世話になっている先輩が、僕をプッシュしてくれたらしいのです。「なぜですか?」と問うと、「パリコレなんか知らないのにパリコレをやってみたいとか言うし、とにかく存在が面白かった」と言うことでした。人生は出会いだなとこの言葉を聞いた時、思いました。
採用後は順調にいったのですか?
いいえ(笑)、ある程度の覚悟はできていたのですが、あまりの厳しさに3か月間は毎日退めたいと思っていました。しかし、僕を採用へと導いてくれた先輩が一人前にするために厳しくしたことを後々知ることになり、ありがたいことだなと今は思っています。
結局、1年後には2号店の店長になり、6年間勤務しました。その間、近くに有名店が出店するなどさまざまなプレッシャーもありましたが、マネージャーとなり、3店舗をまかされていました。
その時、29歳。充実した毎日ではありましたが、ふと立ち止まり自分がやりたかったことを思い出すことになったのです。それは、ショーや雑誌の仕事。そこで、思い切って退職を決めたころ、運よく知り合いが雑誌の仕事を持ってきてくれました。これがスタートとなりました。
その後、売り込みのために必要なブックと呼ばれる作品集作りと並行しながら、次第に仕事が入ってくるようになっていったのです。その後、パリへ渡り、パリコレなどを経験。帰国後は、フリーランスとしての多忙な日々が待っていました。
国内・海外の雑誌、ショー、広告、コマーシャル、ミュージックビデオなどの仕事をこなしていきました。
サロンの仕事と雑誌やショーの仕事はどのように違いますか?
どちらも対象となる「人」を、美しく変化させるという点では共通しますが、サロンの仕事は、ヘアスタイルのみということに対し、雑誌やショー・コレクションの仕事は、服がメインとなり、テーマに沿って、スタイリスト、ヘア、メイクなどがコラボレーションしていく中で形成されていきます。
すべては全体のバランス。ですから、テーマによっては無造作を作り出すこともよくあります。ヘアーだけ全面に出てはいけないんですね。チームで作品を作ることに醍醐味があると思います。
僕は、サロンと雑誌・ショーの両方が経験できてよかったと思っています。
沖縄に出店した経緯は?
40歳までには故郷沖縄に自分のお店をオープンしたいと考えていたのですが、36歳の昨年、出身地北谷にオープンすることができました。東京で第一線でやっているのになぜ?と言われますが、僕が東京で学んだことを沖縄の後輩に教えていきたいという考えがあったんですね。
1年を振り返っていかがですか?
沖縄を拠点に東京や海外の仕事をするというスタイルの基本が確立できたと思います。3年前から参加している東京ガールズコレクションに、今回から僕の店のスタッフを連れて参加しました。大変いい刺激になったようで、よかったと思っています。
一方、サロンの方は、コレクションや雑誌の仕事をしてきたという話が一人歩きしてしまって、敷居が高いイメージがついているようでこれは失敗したなと思っていますが、一度来店したお客様の口コミで、僕の肩の力の抜けた雰囲気が次第に伝わっているようで(笑)、まあ、これからかなと思っています。
今後の夢・目標は?
北谷の店を情報発信の拠点にしていきたいですね。来週、4月28日月曜日には、スタッフがショーを開催することになっています。僕は遠くから眺めています(笑)。スタッフたちのがんばりがうれしいですね。
コンセプトとしては、お客様の眠っている個性をうまく引き出せたらいいなと考えています。例えば、「おまかせ」というお客様もどこかにこだわりがあるはずなんです。それを聞き出しながら、新たな提案もさせていただくというスタンスを取っています。
近々には、東京に支店を出せたらと考えています。沖縄に本店があって東京に支店がある美容室って、なんかいいじゃないですか?